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2026.10.14

『環境としての服』  第4章

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第四章:実証実験経過 ― セメント用川砂を用いたプランター検証(1〜31日目記録)

第三章で整理した仮説と課題を検証するため、既存の培養土や外部肥料は一切使用せず、ホームセンターで購入した「建材用川砂(コンクリート・セメント用)」のみをベースにしたプランター実証実験を行っている。 建材用の川砂は、セメントの硬化不良や鉄筋の腐食を防ぐために徹底的に洗浄されており、有機物や粘土分、塩分が極限まで取り除かれた「ただの石の粒」である。ここに染色した生地チップを投入し、砂の中がどう変化するかを土壌測定器(pH・水分量・地温・肥沃度)と植物(ホワイトクローバー・白妙菊)の生育によって記録している。

1. 実験条件(プランター1)

・ベース: 建材用川砂(セメント用)

・初期投入資材: 大麻絡み織生地チップ(カオリン・胡粉・ゼオライト・ヒナイグリーン・呉汁染 / キトサン・酢・にがり処理)

・追加投入(29日目): ヨウリン・雲母を追加した染め生地チップを投入

・播種した植物(10日目): ホワイトクローバー、白妙菊(シロタエギク)

2. 初期〜30日目の経過:10日間の撹拌・播種・発芽とアルカリ化

① 初期(投入後10日間)の撹拌と種まき・発芽

生地チップを投入してから最初の10日間は、適度な水やりと撹拌を実施した。大麻絡み織のチップは早い段階で糸がほつれ、砂の内部で砂粒を物理的に絡め取った。撹拌すると空気を含み、ただの川砂でありながらフカフカとした物理的構造が形成された。 10日間の撹拌を終えた後、ホワイトクローバーと白妙菊(シロタエギク)の種をまいたところ、3〜5日で発芽が確認された。

(※なお、別プランターで検証している綿ローン等の高密度な布帛チップでは、10日間の撹拌でも繊維のほつれは遅く、水分が抜けると砂と生地に分かれてしまい物理的な骨格にはなりにくい。しかし松煙・柿渋コーティングを施したチップが入っているため腐敗が抑えられ、pH8.0付近で「土のような匂い」がして植物も本葉を展開した。)

② 30日目の記録と観察

【30日目 計測結果(2カ所計測)】

・pH値: 8.4 〜 8.6(アルカリ性)

・水分量(MOIST): 23% 〜 30%

・地温(TEMP): 18℃

・肥沃度(Fertility): LOW

 

・植物の生存状況と砂の変化

 10日目の種まきから3〜5日で発芽したホワイトクローバーと白妙菊は、30日目時点までに半数が枯れるか萎れていったが、残りの半数は一部のエリアで固まって枯れずに生き残っている。 砂の匂いを嗅ぐと、わずかにアンモニア臭とも溝臭(どぶ臭)ともつかない臭気が感じられた。pHが8.4〜8.6までアルカリ化しているのは、砂の中で呉汁のタンパク質や繊維の分解が進み、アンモニア等が発生している通常の反応と考えられる。同時に、立体的な大麻絡み織が水分と栄養を多く抱え込むため、微細な空間で局所的な酸素不足(嫌気性反応)が起き、これが半数の芽が枯れた要因(ガスや高pHのストレス)になったと推察される。

 

・方針の転換(撹拌と調整の停止)

 ここで臭いやアルカリを抜くために激しく撹拌してしまうと、せっかく砂の中に生じた窒素資源(アンモニア)が大気中へ揮発して逃げてしまい、伸び始めた微生物の菌糸ネットワークも断ち切ってしまう。すでに繊維によってフカフカの物理構造はできているため、植物が生存している区画はそのままにし、無理なpH調整や過剰な撹拌をやめて「基本放置(静置)」で酸化(硝化)を待つ方針に切り替えた。

 

3. 31日目の経過:降雨による水分上昇と肥沃度「NORMAL」への変化

① 31日目・午前(小雨)

すだれの下にプランターを配置し、強い雨粒の直撃を避けながら小雨を入れた。

【31日目・午前 計測結果(2カ所計測)】

pH値: 8.4 〜 8.6

水分量(MOIST): 24% 〜 26%

地温(TEMP): 20℃ 〜 21℃

肥沃度(Fertility): LOW

雨天にもかかわらず水分量が24〜26%にとどまっており、ほつれた絡み織と砂の隙間から余分な水がスムーズに抜け、自然通気(水が抜ける際に上部から新しい空気を引き込む働き)が機能していることが確認できた。双葉が落ちて個体数は減ったが、現在生き残っている個体がこれからどうなるかが、砂の中の状況を測る指針(バイオインジケーター)となる。

 

② 31日目・午後(晴天回復後)

雨が上がり、晴天となった昼に3カ所を計測した結果、数値に大きな変化が現れた。

【31日目・午後 計測結果(3カ所計測)】

地点 1: pH 7.7 / 水分量 66% / 地温 25℃ / 肥沃度 NORMAL

地点 2: pH 7.2 / 水分量 58% / 地温 26℃ / 肥沃度 NORMAL

地点 3: pH 7.7 / 水分量 63% / 地温 26℃ / 肥沃度 NORMAL

すだれ越しの雨が下層まで浸透して水分保有率が58〜66%に上がり、8.4〜8.6あったpH値が7.2〜7.7(中性〜ごく弱いアルカリ性)へと落ち着いた。そして、これまでずっと「LOW」だった肥沃度(Fertility)が、3カ所すべてで初めて「NORMAL」へと変化した。

 

4. 対照実験と肥沃度変化に関する考察

なぜ31日目の午後になって突然、肥沃度が「LOW」から「NORMAL」に変わったのか。測定器の故障や単純な水分の影響を疑い、いくつかの比較検証を行った。

① なぜ今まで「LOW」だったのか(水分量と通電性の関係)

使用している測定器は、2本の金属プローブ間に流れる電気の通りやすさ(電気伝導度=EC)によって、水に溶けているイオン(電解質)の量を測り、肥沃度を判定する仕組みになっている。 これまでは砂の中の腐敗(酸欠)を防ぐために水分量を20〜30%台と少なく調整していた。そのため、砂と繊維の隙間が「空気」で分断されて電気が流れず、砂の中に成分があっても「LOW」と判定されていた可能性が高い。通常の土であっても、乾燥していれば測定器はLOWを示す。

② 対照実験1:何も混ぜていない「元の川砂」との比較

「単に水分が増えただけで測定器の構造上NORMALになるのではないか」を確かめるため、何も混ぜていない元の建材用川砂に水を加え、水分量を41%にして計測した。

・結果: 「LOW」のまま

・考察: 洗い流されたセメント用の川砂と水だけでは、電気を運ぶイオンが存在しないため肥沃度は上がらない。つまり、プランター1でNORMALが出たのは、投入した生地チップ由来の成分が砂の中で確実にイオンとして存在し、かつ雨で流れ出ずに保持されている事実を示している。

③ 対照実験2:開始2日目の別プランターとの比較(初期反応と分解の切り分け)

現在、別のプランターを作成して新しい生地チップを入れている。こちらは開始からわずか2日目だが、水分量を56%にしたところ、同じく肥沃度が「NORMAL」と表示された。 わずか2日目でのNORMAL表示は、微生物の分解によって栄養が作られたものではない。第三章で触れた通り、繊維の奥に残っていた微量の遊離ミネラル(にがり成分等)が水に溶け出した初期反応によるものと考えられる。測定器は「初期のミネラル溶出」も「分解後の肥料分」も同じ通電性として検知する。

5. 31日目時点でのまとめ

開始2日目のプランターで見られた初期のミネラル溶出を呼び水として、砂の中では微生物の活動が始まる。 そして31日目のプランター1は、そこからさらに進み、一度pH8.6付近まで上がる有機物分解(アンモニア発生)の山場を越えた段階にある。31日目の小雨によって水分が約60%まで満たされ、晴天で地温が25〜26℃まで上がったことで、弱酸性の雨水による希釈・中和とともに、アンモニアが硝酸等へ変わる「酸化(硝化)プロセス」が進行し、pH7.2〜7.7への安定と本来の肥沃化へ移行しつつあると推察される。

初期(10日間)の撹拌で砂と繊維を絡ませて物理的な器を作った後は、人間が不自然に数値を管理して調整しようとするよりも、すだれ越しのような半自然の環境(雨ざらし)に置いて天候のサイクルに委ねる方が、すべてが回って落ち着くところに落ち着くのだろう。 引き続き、5日ごとの記録を続けながら、生き残っているホワイトクローバーと白妙菊の生育と砂の変化を追っていく