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2026.03.15

【服作りの解体新書】縫製工場のリアルと、ブランドが共に歩むための構造的理解【5】

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情報ではなくリアルを突き詰める「相互監査」の必要性

これまでの連載で、服作りにおける様々な基準や構造についてお話ししてきました。最終回となる今回は、これらすべてを机上の空論で終わらせないための絶対的なプロセスについてです。それは、第三者機関の認証でも、ネット上の情報でもない、当事者同士の足と目による「実地監査」です。

 

「ただの情報」で判断する危うさ」

今の時代、WebサイトやSNSを見れば、美しい理念(きれいごと)がいくらでも並んでいます。しかし経験上、表向きの情報と会社の実態(内情)が乖離しているケースは珍しくありません。言葉の背景にある文脈を無視し、表層的な「ただの情報」だけで判断を下すことは極めて危険です。

 

業界に溢れるリアルな悲劇と「責任転嫁」

互いの実態を見ないまま進めた結果起きる悲劇が、この業界には溢れ返っています。

ブランド側の被害

 工場に任せきりにした結果、上がってきた不良品に対して、工場側から言葉巧みに言いくるめられ、責任を転嫁されて泣き寝入りする。

工場側の被害

 華やかなファッションショーに参加しているブランドであっても、いざ支払いとなると様々な理由をつけて未払いを起こす場合もある。 こうした泥沼のトラブルは現在でも起こっている現実であり、規模の大小や表向きの華やかさは、ビジネスパートナーとしての信頼の担保には一切なりません

コミュニケーションの究極は「リアル」にある

だからこそ、「実際に会う事、現場で確認し合う事」が前提になければなりません。 ブランドが工場を監査する際、技術や設備だけでなく、従業員への聞き取りや労務資料の確認など、踏み込んだ内情を見極める必要があります。工場側もブランドの熱量を直接確認する。そして最も重要なのは、「ブランド側と工場側の基準の共有」です。何を望むのかによって、基準は変わります。

自らの足で現場に出向き、互いの実態を監査し、基準を共有する。このプロセスから逃げないことでのみ、個人の熱量はビジネスとして成立する「持続性のある算盤」へと昇華します。互いの厳しい目が交差し、リアルな現場で納得し合えた時、初めて「本当に良い服」を生み出すための協働がスタートするのです。