COLUMN記事
JOURNAL
2026.03.15
【服作りの解体新書】縫製工場のリアルと、ブランドが共に歩むための構造的理解【4】
【第4回】「工賃」のブラックボックスと、工場の説明責任
キャパ取りと並んで揉めるのが「工賃」です。そもそも工賃に「正確な統一基準」など存在しません。職人の技術力だけでなく、光熱費、設備のメンテナンス代、そして何より「労務環境(適正な給与水準)」といった必要経費に、工場ごとに明確な差があるからです。
ここで問われるべきは、迎え入れる「工場側の課題」です。
なぜ工賃が高いのか。あるいは、なぜ安いのか。これまで工場側も決して理由の説明を放棄してきたわけではありません。しかし、それがブランド側に正しく「理解」されているとは言い難い状況がありました。専門用語や「職人の感覚」といった工場側の言語だけで発信する一方通行の説明では、ブランド側に真の納得は生まれません。
工賃を提示されたブランド側が納得できないのは当然であり、工場は「この工賃にはこれだけの経費と技術、そして職人の生活環境の保証が含まれている」という算盤の内訳を説明し、相互の理解を構築していく責任があります。
すべての仕様や工程をデータとして完全に可視化することは現実的ではありませんが、説明を一方通行で終わらせてしまえば、互いの関係性は「信頼」ではなく単なる「打算」に陥ってしまいます。工場側はこの事実を重く受け止め、対話によって双方が納得できる関係性へと改善していく必要があります。