COLUMN記事
JOURNAL
2026.03.04
デジタル製品パスポート(DPP)の導入と、アパレル産業の構造変化について
現在、ヨーロッパを中心に「デジタル製品パスポート(DPP:Digital Product Passport)」という新しい規格の法制化と導入が進められている。
これは、衣類などの製品にQRコードやICタグを付与し、その製品のライフサイクル全般にわたる詳細な情報をデジタルデータとして記録・開示する仕組みである。
具体的に記録・追跡される情報には、主に以下のようなものが含まれる。
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使用されているすべての原材料とその調達元
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製造された国や工場、加工工程などのサプライチェーンの全履歴
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製造プロセスにおける環境負荷(CO2排出量や使用された化学物質など)
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修理の方法、リサイクル可能性、廃棄に関する情報
これまでは、製品のタグに「最終的な生産国」と「素材の混率」が記載されているのみだった。しかし、DPPの導入により、製品が「どこで、誰の手によって、何を使って作られ、どのような環境負荷を生んだか」という物理的な履歴が、消費者側からスマートフォン等で直接確認できるようになる。
この規格はEU市場で流通する対象製品に義務付けられる見通しとなっており、実質的にグローバルスタンダードとなる可能性が高い。
これに伴い、今後のアパレル産業においては、素材の調達から縫製、そして廃棄に至るまでのサプライチェーン全体の透明化が、企業側の任意の取り組みではなく、市場に参加するための絶対的な要件へと移行しつつある。
これは決して海外市場に限った話ではない。いずれ日本の国内市場においても、アパレルブランド単体ではなく、素材メーカーから我々のような製造工場に至るまで、サプライチェーン全体で向き合っていくべき構造的な課題となっていく。